チェルシーの包装を思い出す

以前プレイしたゲームMINDHACKの新しいストーリーが追加されたので遊びました。シュッとした線でかっこいいシルエットとおしゃれな色の画面、プレイヤーキャラの手品師じみた手のアニメーション、雰囲気のある音楽が良いゲーム。犯罪にいたる人間の心の「悪」は取り除かれるバグであるという価値観がある世界で(近未来日本っぽい?)悪人の心と接続して悪性のもとを読み取り、取り除いたり塗りつぶして善い人間に作り変える……という技術がマインドハック、主人公はその天才的な使い手である先生だそう。ビジュアルノベルでマインドハックのシーンは簡単なタイピングなんですが、悪人の心の脆いところを無理矢理読み取ってその心の悲鳴や鬱屈したことばをタイピングしていくのが背徳的、かわいそうはかわいい、露悪的……人によって好き嫌いが別れそうです。私は共感や同情しつつも次第に塗りつぶしていくのが操作的に楽しく感じてしまって、作り手の演出にまんまとやられたなと思いました。

クリアしてからPCを買い替えたのでインストールからやり直し、2周目感覚で前回は選ばなかった選択肢を踏んでいったら今回追加された4章で見事にバッドエンドに行きました。なんだその実績アイコンは。本編の導入から少し不穏の種がまかれていて、3章の時点で相当主人公こと先生もアレだなあと感じさせてくれましたが4章で一気にアクセルを踏んだと言うか……やばそうな選択肢を踏み続けていたのもありますが、先生を庇護して可愛がっているAIがいかにも秩序や規律のために暴走してやりすぎるタイプの描写なので「あーあーあーこれやったら多分だめなやつだよー従うしかないのかよー」と思いながらポチポチタイピングしていました。過保護LAW属性な感じのFORMATに対してラブアンドピースCHAOSなCOM_Z、どっちも4章で見る限り極端で、私としてはどっちの話も信用できねえ~となりつつシステム的にはFORMATに従うしかなく「はい、FORMAT」という選択肢形式の返答をクリックしないと進めないのが少しストレスですね。こういうひとつしかない選択肢を選ばせることでプレイヤーがただ文章を読むだけでない印象付けをする手法、前にFGOで見てなるほどなあと思ったんですが自分の気分が乗らない方向で操作させられるのはなかなかにストレスでモチベーションが少しずつ削られるのかも知れません。(そういえばFGOでも新宿でカヴァスⅡ世(犬)に対してチョコレートか玉ねぎを選択させられるのがめちゃくちゃ嫌だったんでした)

じゃあFORMATに対するCOM_Zはいいかと言うと、きわめて個人的に公式の扱いがあまり好きでなく……3章のシノが言っていた「博士」は彼なんだろうとは思いつつ、本編未登場のキャラを公式のスピンオフや小ネタコンテンツでゆかいに面白く扱っていたのが何だかなあと、ストレートに言うと同人二次創作のノリっぽくて本編を遊びきるまでは見ない方が良かったなとなってしまって。まあ蓋を開けてみたら本編でもそんなノリのキャラだったのでいいのか悪いのか分かりませんが、要は未登場のキャラを舞台裏のお祭りに出さないで欲しかったし何なら完結してないのにお祭りしないで欲しかったという気持ちでした。本編が未完結で開発中、プレイヤーが離れないよう開発状況の他にもキャラクターの裏話などなど出していかないといけないのも理解するのですけども。

マインドハック中はミスタイプや時間でストーリーへの影響はないのでゆっくり遊べますが、クリアタイムに応じて後から追加される資料のどこまでを閲覧できるかが変わるので3周目もう少し頑張ろうかなと思います。夏にPCを新調して全然このキーボードの感覚に慣れてないのと、単純に英単語のタイプが下手なんですよね。日本語をローマ字入力で打ち込むのは自分なりに慣れてたつもりなんですが、アルファベットの何が並んでいるかで意識してない気がします。一番最初は学校の授業でホームポジションを意識しつつAから順に1分間で何文字打てるかとかやってたんですが忘れちゃったんですかね。

4章は公式サイトのコンテンツでひっぱりだこのコムちことCOM_Zが満を持して登場しましたが、個人的には2章のヤマムラくん(イチオシ)が再登場したのと妹さんが出てきたので全部持ってかれた気がします。先生が初めて破壊をしてしまった彼は廃人同然になってしまうものとばかり思っていたので、君ちゃんとしゃべれるようになったんかいという気持ちと誰だお前という気持ちです。私は彼の鬱屈した青臭さ、自分はもっとやれる周りは愚か誰も理解してくれやしない……そんなところをとても好きなので作り変えられ「更生」してしまった姿になるほどこれが尊厳破壊……とショックを受けたのでした。神様のキャビネットである彼の中にはいびつな空白が確かに存在していて、それは空白という形の存在であって存在の欠如ではなく、ましてきれいな花を詰め込んではいけないんだ……あの空白ごと彼を愛したかった……と、作中のマインドハック技術のある種の野蛮さを改めて感じました。じゃあユーニッドはいいのかと言うと彼は不思議とあのノリが合う気がして、でもたぶん追加資料を見たら尊厳破壊されてるんじゃないかとも思います。タイピング練習しておこう……追加資料の閲覧は救済措置として全解放が最初から選べるんですが、自力でもう少しやってみます。その先の資料を読んで、鬼が出るか蛇が出るか……ゲーム本編も5章以降こんな気持ちでやるんでしょうね。